晩秋のうぐいすに甦る
遅れ咲きのサトザクラを眺めて森に入った。その途端
頭上の梢から、ホ―ホケキョーホ―ホケキョ ケキョ
ケキョ。
足を止めて、聴くとみごとな旋律を奏でている。
いつの間にか、初老のご婦人が傍にきておられた。
歩道も通勤者が多勢集まって、ホ―ホケキョに耳を
かたむけている。
うぐいすは唄い続けた。
「もう、会社に遅れるからそれでよい」と、勝手を言うと
チラッと茶褐色の姿をみせて他へ移って行った。
森を出て、皐月のところへ来た時、先程のご婦人が、
「一回りされたのですか」
「はい、うぐいすはよかったですね」
「小学校の唱歌みたい」
どっと笑って顔を見合わせた。
一昨年、去年も一声きいただけ、今年は聞かれ仕舞に
なってしまうと思っていた。報われた。
今日は長いたのしい一日になる。
小鳥からも人間はパワーをもらわなくてはなるまい。